新綱島検車区業務日誌

主に模型いじりの記録を、備忘録として。

【机上研究】快速「海峡」の編成について(その9)

前回の続きです。

 

昨年から不定期で、「快速海峡の編成について」と称して、かつて津軽海峡線で運行されていた快速「海峡」の編成考察を行っています。

実車編成に関する考察記事を上げてきましたが、前回から趣向を変えて模型製品の考察をしています。「既製品の海峡セットを利用して史実編成を再現するとどうなるか?」といった内容の記事になります。よろしければお付き合いください。

前回は2000年〜2011年発売のマイクロエース製品を見てみました。今回はTOMIX製のHO・Nゲージ製品について考えます。

なお本記事は製品レビュー記事ではありません。当該製品を所有していないまま、あくまで「編成を組む」という観点からの考察になりますので、悪しからずご了承ください。

 

バックナンバーはこちら:

【机上研究】快速「海峡」の編成について(その1) - 新綱島検車区業務日誌
 その1は実車研究。牽引機であるED79形について。

【机上研究】快速「海峡」の編成について(その2) - 新綱島検車区業務日誌
 その2は使用客車である50系について。

【机上研究】快速「海峡」の編成について(その3) - 新綱島検車区業務日誌
 その3は50系の編成パターンの考察(1988年~1994年改正)です。

【机上研究】快速「海峡」の編成について(その4) - 新綱島検車区業務日誌
 その4は50系の編成パターンの考察(1997年~2002年改正)です。

【机上研究】快速「海峡」の編成について(その5) - 新綱島検車区業務日誌
 その5は『JR気動車客車編成表』に基づく補遺・俯瞰的な記事です。

【机上研究】快速「海峡」の編成について(その6) - 新綱島検車区業務日誌
 その6は14系の概要を簡単に。

【机上研究】快速「海峡」の編成について(その7) - 新綱島検車区業務日誌
 その7は14系の列車編成の変遷を、配置区の変遷と合わせて。

【机上研究】快速「海峡」の編成について(その8) - 新綱島検車区業務日誌
 その8は模型製品に関する考察(マイクロエース編)

 

資料を整理でき次第継ぎ足しながら書いていますので少し読みづらい構成になっているかもしれませんが、「その1」から順にお読みいただくと、「海峡」の編成について多少ご理解頂けるかと存じます。

 

目次

 

鉄道模型既製品における快速「海峡」号の製品構成

前回のものの再掲になりますが、私が把握している限り、「50系5000番台」や「快速海峡」などと銘打つ製品はマイクロエースTOMIXの2社から発売されており、発売順に列挙すると以下のようになります。

 

 

大きく分けて「マイクロエースNゲージ製品」と「TOMIX製HOゲージ製品」、そしてこの度発売となる「TOMIXNゲージ製品」の3種類が存在します。本記事では、このうちTOMIX製のHO・Nゲージ製品について、製品に手を加えることなく再現できる列車編成について考察してみようかと思います。

 

TOMIX製HOゲージ製品群

製品構成

まずは発売済みのHOゲージ製品について確認します。本製品は2020年5月発売で、オハフ50形・オハ50形が2両ずつセットされたセット(以下、基本セットと呼称)と、限定品として設定された非冷房オハ51形2両セット(以下、増結セット)の2製品がラインナップされました。製品の設定は、オハフ車のトイレ対向部に自販機設置に伴う窓埋め再現がないため、同改造の非対象車、もしくは改造実施以前となります。同時に非冷房車の製品設定があることから、1988年の運転開始当初をイメージしたものであることは間違いないでしょう。公式ホームページに記載の編成例にも「1988年頃」の表記があります。

公式ホームページの編成例

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こちらは製品紹介ページに記載されている編成例を、当ブログいつもの形式で表記したものです。図1-1は基本セット2組を使用して8両編成を組んだもの、図1-2はそれに加えて増結セットを1組使用し10両編成を組んだものとなります。

さて、図1-1から見てみましょう。私の理解している組成法則に従って解釈すると、こちらは1994年冬頃~1997年春頃の編成に見えます。当ブログを初めてご覧の方は本シリーズ「その5」などをご覧いただきたいのですが、函館方に固定編成で組成される「基本編成」部分が、この編成だと4両編成ということになります。製品ページの「1988年頃」という表記は、何か根拠となる資料があるのか大変気になるところです。

図2-1についても同様です。やはり基本編成が4両編成であるように見えますが、非冷房オハ51が連結されている以上、1988年でなければなりません。2両以上連結されていたかも定かではありませんが、非冷房車は指定席車に充当される可能性の高い編成両端部を避けて編成中央に連結されていただろうと想像できますので、もし非冷房車を連結するならこのあたりに来ることになるでしょう。

ただし、一概にこれらの編成が誤りであるとは申し上げられません。なぜなら、開業初年(1988年)は想定以上の旅客需要に対応するためイレギュラーな編成が組成されたことは十分考えられますし、そして私の手元にあるこの時期の編成記録は大変数が少なく、この頃の編成についてはまだ研究が不足しているからです。

私は「海峡」の編成を100例ほど蒐集しましたが、多くが後年のドラえもんラッピング時代のもので、特に開業初年の資料が不足しています。そして、その全体を俯瞰して見えてきた「組成パターン」はありますが、手元の資料の中でそれに唯一あてはまらない編成記録が、他ならぬ1988年3月13日、つまり快速「海峡」の運転開始初日のものなのです。

よって長々と書かせていただきましたが、要するに「TOMIXの編成例は私の考える組成パターンにあてはまらないもの」であり、ただ「それが存在したか、存在しなかったかについては全く断言できない」という、非常にあやふやなことを申し上げるしかないという現状をお伝えしなければなりません。

組成パターンに則るには

普段ご覧にならない方が閲覧される可能性を考慮して念のため繰り返し申し添えておくと、これはあくまで「私が考える組成パターン」に過ぎません。編成例を集めて並べた中で、「どうやらこんな法則性があるようだ」、と私が想像しただけのものです。今後ひょっこりとこれらを否定するような資料が顔を出さないとも限りませんので、くれぐれも「海峡の編成とは必ずこうなるものだ」と思われず、あくまで参考としてご覧いただきたく思います。

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まず、限定品である増結セットを使用せず、基本セットのみを2組使用した場合の組成例です。

開業当初や1992~1993年頃の基本編成が5両だった時代を再現するならば、図2-1のように、函館方3・4両目を入れ替えれば済みます。これで5+3の8両編成が完成です。

1989~1991年頃の7両基本編成時代は図2-2のようになるでしょう。5両目のオハフを7両目にもってくることで7+1の8両編成が組めます。

1991年頃に存在した6両基本編成時代の再現であれば、このように組むことで6+2の8両編成が組成できます。1~4号車を基本編成と解釈すれば、1994~1997年頃の基本4両時代の4+4(4+2+2)編成に見立てることも可能です。

ただし、1992年以降は一部のオハフ車について自動販売機の設置が行われ、トイレ対向部の窓埋めが行われているため若干外見に変化があります。気になる方は手を加えていただくのがよいでしょう。

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上記に加えて限定品の増結セットを使用し、非冷房オハ51形を組み込む編成です。まず函館方5両に基本編成を組成した時点で、基本編成にオハフを3両使用するため、増結車に使えるオハフが1両しか残りません。あまり何両もオハ車を連続させるのは少々違和感がありますので、この編成例では、オハ3両連続とし、このうち基本編成に近い側に非冷房車を1両だけ組み込む形にしてみました。非冷房オハが1両余る形です。

実は、これによく似た編成例があります。本シリーズ「その5」の図1-2がそれで、今回のこの図にさらに2両を増結すると「その5」の図1-2と等しくなります。

TOMIXNゲージ製品群

製品構成

上記HOゲージ製品の発売から1年、ついに待望のNゲージ製品の発売が発表されました。発売はまだまだ先のことですので、今後製品仕様が変更される可能性があるかもしれませんが、現時点で判明している情報から内容を考察してみます。

まず製品構成ですが、現時点では6両セット1種類のみのラインナップです。HO製品と同様にオハフ50・オハ50のみのシンプルな構成で、HOと同様に運転開始当初をイメージしたものと思います。

なお発売告知には「TOMIXの快速海峡シリーズ」の文字列が記載されており、また時期未定ながら14系編成の発売も予定されていることから、今後51形やカーペットカーなどの特殊仕様車のラインナップも期待できそうです。

公式ホームページの編成例

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ホームページに記載の編成例はこの1例のみで、「1990年頃」との表記があります。

編成について特にイチャモンはありません。ここへ来て、ようやく私の納得する編成例が掲載されたわけです。基本編成6両時代か、もしくは4両編成時代の4+2編成がこのような組成になります。

ただし、1990年という表記については少し疑問を呈したいところです。まだ若干議論の余地が残っているのですが、状況証拠的に基本編成の6両化は1991年3月とみています(詳細は「その5」をご参照ください)。1990年は基本編成が7両でしたので、少々惜しいですね。

また、1両減車して5両編成にすることで、基本編成が5両だった時代が再現できます。

フル編成を組みたい

さて、せっかくですから最長12両のフル編成を組んでみたいものです。Twitterなどで拝見する限り、「2組買ってフル編成にしよう」といった声が散見されました。私も同じ事を考えています。

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ということで4つほどフル編成を並べてみました。

図5-1はセットの編成表を単純に2本繋いでみたもの。正直、これでも違和感はありません。基本編成が4両または6両の時代に、「あったかもしれない」編成になります。

図5-2以降は実際の編成記録からです。

まず図5-2は、先ほども取り上げた1988年の11両編成、本シリーズ「その3」の図1-2の編成から、中間の非冷房車を冷房車に置き換えたものです。1988年は11両が最長だったことと、号車番号が逆順で付番されていたことに留意する必要があります。

図5-3は基本7両時代。同じく「その3」の図2-5から、1989年8月の編成です。青森方にオハフが連続する、非常に「らしい」編成といえます。

図5-4も「その3」から、図3-6の編成です。基本5両編成時代です。

基本6両時代と4両時代のフル編成の記録が見つかりませんでしたが、上記を参考に、函館側に基本編成が来るのを意識して、青森方にオハフをちりばめると「それっぽい」編成が組めると思います。

「それっぽい」編成を組むために意識したいポイント

さて前回のマイクロエース、今回のTOMIXと製品内容から編成の組み方を考察してきました。もちろん、再現したい時代の再現したい両数がそのまま編成例として記録にあれば言うこと無しなのですが、100例も編成例を集めても、まだまだ足りないものだらけで、「この時代に何両編成を組むにはどうしたら?」といった疑問は尽きないものです。

記録にない以上、「史実に存在した編成」と断言できる編成ではなくなりますが、私が多少調べた中で見えてきた「編成パターン」がありますので、そのうち基本的なものをここで紹介したいと思います。

基本+増結を構成する

このシリーズを書き始めてから、「基本5両時代は~」「増結編成が云々」と申していますが、おことわりしておくと、そのような内容に言及した書籍などは今のところ出会えていません(あるかもしれませんので、ご存じの方はぜひお知らせください)。あくまで、私が勝手に呼称しているに過ぎませんので、巷で、特に私より「ちゃんと」ご存じの方に「基本編成が~」とお話されても、「はあ?そんなものはないですよ」と言われてしまうかもしれません。あくまでも私の中の概念ですので、そこはご理解ください。

さて、私が見る限り、快速海峡の編成は次のようなイメージで組成されているようです。

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つまり、函館方にはその時代ごとに設定された「基本編成」が固定されており、週末や繁忙期などは必要に応じて青森方に「増結編成」を連結する、という法則性が見えます。編成内容が固定される基本編成と異なり、この増結編成の内容は一定せず、場合によっては複数の細かい増結ユニットのようなものが組まれていて、例えば朝に「基本+増結A+増結B」で運用入りした編成が、昼に「増結B」のみを切り離して「基本+増結A」で運転され、翌日はさらに「増結A」も切り離して身軽な基本編成だけになる……といった運用がなされているように見えます。

この増結編成は1両だけのこともあれば、長い編成が組まれている場合もあり、そもそもどこまでがペアなのかといった概念はなかったのかもしれません。オハフの連結位置であればどこで切り離しても構わないので、これを活用して臨機応変に増解結が行われていたようです。

なお、特に繁忙期のフル編成などは青森方にオハフが2~3両連続する場合が多いようでしたので、それを意識するとさらに「それっぽく」なりそうです。

時代ごとの車両構成の変化

50系「海峡」の編成は、おそらく多くの方が想像されているよりもずっと変化の多い列車でした。

下の表は、年代ごとの基本編成の両数の変化と、車両の仕様の変化について簡単にまとめたものです。同様の表を「その3」にも掲載しましたが、一部修正と加筆を加えてあります。

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※ 基本編成の両数は各年4月1日時点のもの、右側の車両形態はざっくり春頃を基準に載せてあります。細かい時期等については「その2」などをご参照ください。

※ 1998年以降の基本編成欄に「4両~」とあるのは、カラオケカーやドラえもんカーの連結列車は基本編成の両数が増加するためで、こちらについては「その5」をご参照ください。

基本編成の両数については先ほど書いたとおりで、細かい時期などはバックナンバーを参照いただくとして(細かい移行時期が特定できていないものもあります)、ここでは右側の色つきの部分をご覧ください。

色分けしてあるものが、組成上区別されていたと思われる区分を表わしています。オハフ50には1992年から自動販売機の設置改造が行われており、同工事が完了した頃から、基本編成中の自販機搭載車の連結位置が固定されるようになっています。一方、自販機の搭載が見送られた車両は、オハフ51と特に区別されずに運用されたようです。

自販機の設置車両は、トイレ対向部の窓が白く埋められているため外見で容易に判別がつきます。ただし、トイレ窓は当初から白くなっているため注意が必要です。

オハ50・51についても冷房化後は特に区別されていないと思われますが、1997年にオハ51全車がカーペットカーに改造されたため明確に区別されるようになりました。

さいごに

今回は、TOMIXからNゲージ製品の製品化発表があったため、急遽手持ちの資料から書ける記事をと書いてみたものになります。やはり注目度が高いと見受けられ、発表直後は当ブログ全記事合計で通常の10倍ほどのアクセスをいただきました。

そもそもこのような記事を書くようになったきっかけも鉄道模型で、マイクロエース製品を購入する際に、「製品を複数組み合わせて長編成を組むにはどう連結したらいいのか?」と疑問に思ったのがきっかけです。「快速海峡 編成」等と検索をかけても、編成例がきちんと載っているサイトは数えるほどしかなく、困った私はYouTubeで「快速海峡」と検索して、動画に出てくる列車の編成を片端からメモしていきました。気がつけばそれがルーチンとなり、50例ほど集まったところで「この成果を他の人にも共有しよう」と思い立ち、記事執筆に至りました。

記事公開後に資料提供をいただいたり、過去の書籍を漁ったりして、今では100例を越えました。もう管理できていないほどなのですが、一方で先ほども書いたようにまだまだ不明なことが沢山あります。

現役時代を知らない若輩者のため自前の乗車記録などは無く、当時をご存じの御先達方を頼るほかありません。もしこれをお読みの方の中で、何かご存じの方がいらっしゃいましたら、ぜひコメントかTwitterなどでお教え頂ければ幸いです。

また、繰り返しになりますが、これらは私の独自研究に基づくものですので、間違い・勘違いなどを多分に含んでいる可能性があります。どうぞその点をご理解くださいますようお願いいたします。

 

来週からは通常の模型弄りブログに戻ると思いますが、今後も資料が集まり次第・整理でき次第、本シリーズの更新も続けてまいります。14系についても書かなければなりません。よろしければ今後ともお付き合い頂ければ幸いです。

 

ひとまず、今日はこれにて。