新綱島検車区業務日誌

主に模型いじりの記録を、備忘録として。

【入線整備】TOMIX 189系田町車(H102編成)

今日の模型弄りです。

 

f:id:hiruzen:20210226140328j:image

首都圏のJRには、「波動用編成」などとよばれる車両が在籍しており、時折運転される臨時列車や団体列車などの運用に供されています。この任には多くの場合、老朽化し第一線を退いた車両に余生を過ごす場として与えられており、かつては167系・169系など運転されなくなった「急行」用の車両が用いられ、現在は185系など古くなった国鉄特急用車両が使用されていることはよく知られている通りです。

今から10年ほど前、私が中高生だった頃の波動用編成は、上記の167系を引き継ぎ、185系に受け継ぐまでの約10年ほど、183系・189系が使用されていました。

183系列は元々短距離特急である房総地区向けの設計で1両あたり2箇所の乗降扉を設けつつ、後に上越線の「とき」や中央線の「あずさ」等に用いられたように高速性能も十分に備えており、必要に応じて高速走行しつつ、乗降時は定期列車の妨げにならないよう素早く乗降しなければならない臨時列車として運用するには使い勝手のよい車両だったのではないかと推測します。後継の185系もほぼ同様ですが、高速運転性能が183系列より劣るため、中央線むけの波動用編成には、E257系を充当するまで189系が使われ続けていました。

 

さて、当時波動用の183系・189系は大宮、田町、幕張と豊田の各車両センターに配置されていました。田町では、編成番号でH41、H61、H81、H101、H102とよばれる車両がこれにあたり、十の位の数字で編成両数を表わしていました。H41はモーター車の調子が悪かったこともあって早くに廃車になりましたが、残る編成は東海道線を中心に首都圏のあらゆる臨時列車に使用されていました。

特に10両編成のH101、H102編成は、波動用として配置された2003年から東京大垣間の夜行快速列車「ムーンライトながら」を補完する臨時「ムーンライトながら91・92号」の運用を担当し、373系による定期「ムーンライトながら」が廃止されてからも、2013年に185系に引き継ぐまでの間、「ムーンライトながら」の運用を担い続けていました。

 

f:id:hiruzen:20210226124249j:image

画像は、修学旅行用の集約臨に使用されたH102編成です。日光から帰る児童たちを学校近くの駅に送り届けた後、所属区の田町に戻るための回送だったかと思います。モノクラス10両という輸送力を活用して、閑散期もこのように修学旅行列車などで使用されており、波動用としてはかなりの稼働率だったのではないかと思います。

波動用ということで特急マークが外されて少々間抜けた顔つきで、ファン間でも好き嫌いが分かれるところでしたが、当時田町車を見かける機会の多かった私としては、この顔こそが身近な183(189)系の姿でした。

 

f:id:hiruzen:20210225180701j:image

余計な前振りが長くなってしまいました。

今回、TOMIXこの田町のH102編成をプロトタイプとした製品が発売されました。上につらつらと述べていたことからもお察しいただけるように、私にとって相当の思い入れがある車両で、かねてより製品化を強く望んでいたものです。もちろん発表日に購入を決意し、予約していました。


f:id:hiruzen:20210225180735j:image

開封。基本6両に中間車4両を足す形式です。H102編成は晩年、6両に減車されて豊田車両センターに転属していました。今回の製品構成は、基本セットだけを購入することで、転属直後から塗装変更までの期間の豊田M52編成も再現できるようになっています。


f:id:hiruzen:20210225180716j:image

さっそく10両を1つのケースにまとめました。臨時「ムーンライトながら」で一夜を明かしながら旅行しまくった頃の記憶がよみがえります。

確証はないのですが、小学校の修学旅行で乗車したのも、H101かH102だったのではないかと思います。乗車回数としては両手の指で足りる程度ですが、思い入れの深い車両です。


f:id:hiruzen:20210225180726j:image

両先頭車を並べました。

田町の183・189系の特徴として、奇数方先頭車が中央線あずさ時代の「グレードアップ車」で揃えられていることが挙げられます。画像右が10号車、左が1号車ですが、右の10号車は窓が拡大されたグレードアップ車であることがわかります。

グレードアップ車を連結した国鉄特急色編成では、窓が大きい車両とそうでない車両の塗り分け線をどう処理するかという問題が起きていて、編成によっては全車がグレードアップ車に合わせた赤色部分の広い塗り分けを採用したりしているのですが、田町のH101、H102編成ではグレードアップ車のみが広い塗り分けを用いています。冒頭の実写画像をご覧いただくと、その塗り分け線の違いがよくわかると思います。


f:id:hiruzen:20210225180720j:image

さて、弄っていきます。

TOMIXのHG製品ですので、相変わらず後付けパーツのランナーが大量に付属しています。初見で見るとビビるのですが、ランナーの都合で使わないパーツが大量に入っているだけなので、作業量としては大したことありません。


f:id:hiruzen:20210225180708j:image

「上級者向け」の注記があるアンテナ取り付けを先にやってしまいます。治具が付属しているので、位置合わせは苦労しません。ただ開けるだけです。


f:id:hiruzen:20210225180711j:image

先頭車のパーツを取り付け終えました。どこが変わったか分かりますでしょうか。


f:id:hiruzen:20210225180732j:image

台車スノープラウが付きました。地味ですが、大切なパーツです。ただ外れやすいので、接着剤を併用した方がいいかもしれません。

今回もダミーカプラーがいい感じです。大宮車では2編成併結の機会がありましたが、田町車は無かったと思います。


f:id:hiruzen:20210225180723j:image

トイレタンク。こちらは車体にはめ込むだけです。


f:id:hiruzen:20210225180729j:image

列車無線アンテナ。微妙に斜めってますね。直しておきます。

あと撮り忘れましたがホイッスルも取り付けです。信号炎管は取り付け済みでした。


f:id:hiruzen:20210225180647j:image

床下にライトスイッチがあるのですが、なにやら穴が開いています。


f:id:hiruzen:20210225180704j:image

ATS車上子を取り付けろとの指示です。さすが細かいですね。


f:id:hiruzen:20210225180640j:image

製品所定の整備が終わりました。

ところで、写真にすると方向幕が青く写ってしまいます。肉眼だと白く見えるのですが……。


f:id:hiruzen:20210225180745j:image

ここからは独自?の整備にうつります。

トイレ窓はブルトレだといつもステッカーを裏から貼って表現していた(適当な過去記事を参照)のですが、189系ではパーツの厚みが違うからか、ちょっと見た目が納得いかなかったので、今回はガンダムマーカーを使用してみました。


f:id:hiruzen:20210225180658j:image

こんな感じになります。ちょっと厚みが出てしまいますが、まあ塗装するよりは楽なのでよしとします。


f:id:hiruzen:20210225180654j:image

この角度ならいい感じに見えるかもしれません。比較用に、背景に画像検索から出した実写画像をおいてみました。


f:id:hiruzen:20210225180643j:image

こちらはお馴染みジオマトリックスさんの方向幕ステッカーです。去年のうちに、他のものと合わせて発注しておきました。左上が「ムーンライトながら」です。


f:id:hiruzen:20210225180738j:image

ステッカーで隠れてしまうHゴム表現をマッキーで入れてみたんですが、ちょっと汚らしくなってしまいました。やるのとやらないの、どっちがいいでしょう……?

ちなみにこれは両先頭車同士を連結させたところ。上述の塗り分け線の違いがよく分かるかと思います。


f:id:hiruzen:20210225180651j:image

最後に付属インレタを貼り付けて整備完了です。183系・189系の車番は赤色塗装のものと銀色切り出し文字のものの2種類がありましたが、この編成は全車が赤色塗装だったようです。

車番以外の標記類は、ATS標記だけ既成で入っていました。所属標記くらいは欲しいところですね。気が向いたら発注してみます。


f:id:hiruzen:20210225180742j:image

ケースに戻しました。車番や方向幕が入ったことで、「生きた車両」になった気がします。こうやって、買ってきた「大量生産品」のどこにでもある模型を整備して、簡単でも手を加えて「うちの子」にするこの時が何よりも幸せです。

 

f:id:hiruzen:20210226134902j:image

H102編成は全車が189系で統一され、モノクラスなので中間車もひたすらモハ188・189ユニットが並ぶだけなのですが、実は形態に差異があるということで、律儀に作り分けがされています。

パンタの載るモハ188の、クーラーのランボードの違いが分かり易いところで、手前が初期車、後ろが後期車です。他にも違いがあるかもしれませんが、勉強不足でよくわかりませんでした。

基本セットに入る方が後期車、増結セットが初期車とのこと。6両化して豊田に転属した時に、初期車ユニットを外して後期車を残す采配をしたということですね。

 

今回製品化されたH102編成は、田町の183・189系の中でも最も整っていた編成でした。編成が189系だけで構成されていたのはこの編成だけで、H101は中間モハの1ユニットと片方のクハが183系でしたし、H41、H61、H81はクハが189系、モハが183系の構成でした。H101に入る183系のモハユニットが座席が簡易リクライニングシートだったこともあり、ムーンライトながらに乗車する時はその車両を避けて座席を取っていたのも懐かしい記憶です。

今後、他の編成も製品化するのでしょうか。最近はTOMIXもニッチな形態差を作り分けて複数回製品化するようになってきているので、今後の展開にも期待したいところです。

 

ひとまず、今日はこれにて。